◆ 抗弁権の接続
1.抗弁権の接続とは
2.割賦販売方の抗弁権接続の適用要件
3.適用が問題となる取引(「保証委託型クレジット」いわゆる提携ローン)
4.対抗できる抗弁
5.抗弁対抗の効果
クレジット契約において、販売業者から商品の引渡しがないとか、引き渡された商品に瑕疵があるなどという場合でも信販会社等からの立替金請求には応じなければならないとすると、購入者は著しく不利益な地位に立たされてしまう。
そこで、割賦販売法では、昭和59年改正にあたり、割賦購入の斡旋を利用した購入者は一定の要件のもとに信販会社に対して、販売店との販売契約上の事由もって割賦金の支払を拒絶できることとした(同法30条の4、30条の5。さらに平成11年改正ではローン提携販売においても、同様の取扱いをすることとした(同法29条の4第項、第3項))。
このように、販売業者に対する抗弁をもって、クレジット会社に対抗できることを、抗弁権の接続と呼ぶ。
法により抗弁権接続が認められる要件は、以下のとおりである(割賦販売法30条の4および30条の5、29条の4第2項および第3項)。
@割賦購入あっせんまたはローン提携販売にかかるものであること
A指定商品・指定権利・指定役務の販売にかかるものであること
B割賦購入あっせん関係販売業者又はローン提携販売業者に対して生じている事由があること
C政令で定める金額以上の支払総額であること
D当該購入が購入者のために商行為とならないこと 以下、各要件について検討していきたい。
@−1「割賦購入あっせんに係る購入」であること
「割賦購入あっせん」とは、購入者等が販売業者等から商品購入等を行う際に、あっせん業者が、購入者等および販売業者等との契約に従い、販売業者等に対して商品代金等に相当する額を交付し、その後購入者等があっせん業者に対し当該額を一定の方法により支払っていく取引形態で、法は、指定商品制を採用したうえ、支払方法については、当該購入者が2ヶ月以上の期間にわたり、かつ、3回以上に分割して支払う場合に限定している。
留意すべき要件は次のとおりである。
(a)特定の販売業者等から、特定の商品購入等を条件に、代金が交付されること
したがって、使途の特定されない融資金による取引には適用されない。
(b)割賦購入あっせん業者から当該販売業者等に交付されることを必要とするが、平成11年改正により、あっせん業者などから販売業者等へ直接代金が交付される場合の他、直接交付されない場合も含むこととされたことから、いったん購入者等が受け取り、これを販売業者等に支払う場合も含まれる。
割賦購入あっせん業者が購入者の委託に基づき販売業者等に代金を交付する法律関係については、制限がない。
したがって、購入者と割賦購入あっせん業者との法律関係は、立替払い契約が通常であるとしても、金銭消費貸借契約でも、保証委託契約でも差し支えないとされている(最高裁判所事務総局編「消費者信用関係事件に関する執務資料」(2)42頁)
(c)割賦購入あっせん業者が購入者から「2ヶ月以上の期間にわたり、且つ3回以上に分割して当該金額を受領する」こと。
したがって、たとえばマンスリークリアー方式の場合には、適用がない。その理由として、
(ア)1回払いの取引は、「割賦取引」を規制するという割賦販売法の趣旨(割賦取引の有するリスクから購入者を保護することを目的とする)になじまないこと
(イ)この類型のトラブルが少ないこと
が指摘されている。
@−2「ローン提携販売」であること
前述のように、割賦購入あっせん業者から販売業者等への代金の交付が購入者等を介しても差し支えなく、また、割賦購入あっせん業者と購入者との法律関係が金銭消費貸借契約でも差し支えないとすれば、ローン提携販売は割賦購入のあっせんの行為形態に含まれることになる。
平成11年改正において、ローン提携販売にも抗弁権接続規定を準用することとされた。
A取引の対象が、「使用商品」「使用権利」「指定役務」でありかつ「政令で定める金額」以上のものであること(同法30条の4第4項1号)
平成11年改正により、それまで「指定商品」のみであった割賦販売法の規制対象に指定役務、指定権利を追加したことに伴い、これらの権利、役務の取引についても、抗弁権接続規定が適用されるこことなった。
政令で定める金額は、個品割賦購入あっせんの場合は4万円、リボルビング式割賦購入あっせんの場合は、現金販売価格で3万8千円である。
B「購入者のために商行為とならないこと」(同項2号)
商人の行為には適用がないという意味である。
| 3.適用が問題となる取引(「保証委託型クレジット」いわゆる提携ローン) |
いわゆる提携ローンといわれる「保証委託型クレジット」は、購入者が信販会社のあっせんによりその提携金融機関から商品代金相当額を借入れ(右借入金は信販会社を介して販売業者に支払われる)、信販会社が購入者の委託により借入金債務の保証をする取引形態である。
したがって、平成11年改正により、提携ローンは割賦購入あっせんの定義を満たすことになる。
購入者は、借入金債務を信販会社経由で金融期間に分割弁済するとともに、信販会社に対し保証料を支払う。
なお、「委託保証ローン提携販売」(法2条2項1号かっこ書)は、購入者の金融機関に対する借入金債務について、販売業者が自ら保証をする代わりに、保証会社(信販会社が保証業務を行う場合もある)が信販会社の委託を受けて保証するものである。最終的な債権回収は、保証委託型クレジットでは、保証債務を履行した信販会社が購入者に対する求償の形で行われ、委託保証ローンでは、保証債務を履行した保証会社が販売業者に求償し、販売業者が購入者に対して求償する形となる。
信販会社に対抗できる事由については、法に特に規定はない。通達は、「原則として、商品の販売について販売業者に対して主張しうる事由は、およそこれをもってあっせん業者に対抗することができる事由になる」としている。
したがって、次のような抗弁事由が考えられる。
(a)請求権の存在は認めるが、その履行を拒む抗弁
期限の未到来、同時履行の抗弁(商品の引渡未了、販売条件となっている役務の提供がない等)、不安の抗弁(販売業者の倒産などによる信用不安)
等である。
◆注意を要する点
・信販会社は、解除(民法545条1項但し書)や詐欺(同法96条3項)の場合に保護される「第3者に該当しない」
・抗弁事由は、契約書面に記載された事項に限らず、販売員の口約束から生じた事由でもよい。
・信販会社が販売業者に代金を支払うのは、購入者の委任によるものであるから、代金支払前ならば、購入者は、理由の如何を問わず、クレジット会社に対し、業者への支払を停止させることができる。
(1)抗弁対抗の効果と返還請求
抗弁対抗の効果は、「対抗することができる」とされており、このことについて通達は、購入者は支払の拒絶ができるだけであり、すでに支払った割賦金の返還請求は出来ないとしている。
改正割賦販売法30条の4の新設後の裁判例では、同条を根拠に既払い金の返還請求を認めたものは見当たらない。
(2)損害賠償または不当利得に基づく請求
法30条の4が返還請求を認めないからといって、割賦購入あっせん業者が損害賠償あるいは不当利得の責任を負わないということにはならない。
信販会社は、消費者トラブル防止のため、販売店との加盟店契約の締結時および契約締結後も加盟店の営業につき調査をすべきであるとされ、また、実体的にも、信販会社と販売店はそれぞれの利益のために互いに利用し合っている関係にあるから、信販会社が販売店の行う違法行為について故意過失があるときは、購入者が受けた損害の賠償義務を負うことも考えられる。
東京地判平成9年5月16日(平成8年(ワ)第11038号)は「被告信販会社は、本件売買契約の解除により、本件立替払委託契約に基づいて支払われた金員を保持する権原を有しなくなったものであるから、これを原告の請求の限度で返還すべきであり、また、本件立替払委託契約に基づく残債務の請求権を有しないこととなったというべきである。」としているが、法的な根拠は不当利得と思われる。
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