◆ 民法による解決***説明義務違反・契約締結上の過失による取消し
(1)事業者の説明義務
消費者契約被害の多くは、事業者と消費者との情報格差によるものである。事業者が保有している情報を、消費者はもともと持っていないことが多い。商品に関する情報や知識もそうであるし、サービス契約などでは、契約の内容によって提供されるサービス内容が異なってくるので、提供事業者から、から適切な説明がなされなければ、消費者は、契約締結により提供されるサービスの内容や質を知ることができない。
こうした観点から、消費者契約法が制定される以前から、消費者事件では、事業者に対して「消費者に対して説明すべき義務がある」とする考え方に基づいて、適切な説明がなされなかった場合には、事業者に対して責任を負担させるとする考え方を構築してきており、学説や判例も積み重ねられてきた。
(2)効果
説明義務違反や契約締結上の過失などの考え方により、契約解除を認めるとするものと、説明義務違反などを契約締結上の付随義務違反ととらえて債務不履行に該当すると構成して損害賠償を認めるものとがある。
こうした考え方は、不動産のように高額で素人には判断のつきにくい難しい商品の売買などの場合と、ワラント・変額保険・投資信託等の利殖関連取引のように仕組みが複雑でわかりにくくハイリスクのものに認められてきた。
ただし、利殖関連取引などでは、ハイリスクのものについて不法行為責任による損害賠償請求を認めるものが主流となっており、説明義務違反も不法行為の違法性判断の一要素として考慮される傾向となっている。
(3)説明義務違反等を肯定した裁判例
@ワラントについて説明義務違反を認めたもの
いずれも損害賠償責任を認めたものである
名古屋簡判平成5年6月30日判例タイムズ848号266頁
大阪地判平成6年2月10日判例タイムズ841号271頁
東京地判平成6年9月8日判例時報1540号71頁
大阪地判平成6年12月20日判例時報1548号108頁
大阪高判平成7年4月20日判例時報1546号20頁
東京地判平成7年6月19日判例タイムズ890号166頁
新潟地判平成8年1月30日判例タイムズ897号161頁
A変額保険について説明義務違反を認めたもの
保険会社に3割の損害賠償を認めたもの
(大阪地判平成6年7月6日金融法務事情1397号48頁)
保険会社に4割の損害賠償請求を認めたもの
(東京高判平成8年1月30日消費者法ニュース28号18頁)
保険会社に5割の損害賠償を認めたもの
(東京高判平成8年2月23日消費者法ニュース28号19頁)
B不動産取引に関して説明義務違反を認めたもの
東京地八王子支昭和54年7月26日判例時報974号74頁
東京高判平成2年1月25日金融・商事判例845号19頁
大阪高判昭和58年7月19日判例時報1099号59頁
東京高判昭和52年3月31日判例時報858号69頁
C契約締結上の過失に関するもの
建築請負契約について、注文主が一般消費者である場合には事業者に説明義務があり、これを怠った場合には契約締結上の過失により損害賠償義務があるとした。
(大津地判平成8年10月15日判例時報1591号94頁)
架空のクレジット契約について、クレジット会社に契約締結上の過失による契約解除を認めた
(釧路簡判平成4年1月23日 NBL494号48頁)
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